2014年02月27日

国語科 読書感想文 優秀賞 高校の部

2月27日(木)

読書感想文高校の部

優秀賞者が朝の放送朝礼で発表してくれました。

高校の部 《優秀賞》

「『舞姫』を読んで」
          高校3年 川口 真実

 この作品は、立場や時代、個人の価値観の相違から生じた悲劇であると私は思う。主人公の太田豊太郎は、幼い頃に父親を亡くし、一人前の認定を得ないまま生きてきた。一方で厳格な家庭教育の中で育ったため、学問に対しての意識が高く、学校でも首席であった。豊太郎のこの「差」こそが悲劇を招いた原因なのではないか。
 私はこの作品を読む中で、豊太郎を子どものように感じた。それは年齢を重ねても、自我を確立出来なかったことにある。おそらく彼は幼い頃から人に言われたことを良く言えば素直に、悪く言えば受動的に聞き入れてきたのだろう。何の批判も反発心もない。学問に関して言えば、もちろん元々興味があったのかもしれない。しかし、学ぶ中で自分はなぜ勉強するのか、という疑問にぶつかることなく、それよりも地位や名誉を周囲から期待され、彼自身もそうなることをある意味で当たり前に思っていたのだと思う。豊太郎は知識は豊富にあるが、「自分」がないために周りに流されやすい人間だ。
 そんな彼は、自分が育った環境とは全く違う異国の地、ドイツに渡り、初めて自我に目覚める。しかし、彼は自分の殻に閉じこもり、外部のものを恐れ、受け入れることが出来なかった。そして、上司や仲間から孤立してしまう。そんな時出会ったのがエリスだ。彼女もまた父親を亡くし、母親にも冷たい態度をとられていた。二人とも頼れる人がいなくて孤独だったのだ。それが二人を引きつける最初の要因になったのだと思う。それから、豊太郎は上司の期待に背き、どこの人だか分からない女性といる、ということで免官され、さらに母親が亡くなったという知らせを受け取る。そばにいるのはエリスだけである。この状況を考えると、「離れ難き仲」になるのは自然な流れであったのだろう。その後、親友の相沢に仕事を紹介してもらい、エリスと楽しいひと時を過ごす。しかし、彼女が妊娠したかもしれないと分かると、彼の様子は一変する。彼女を自分の家族にすることは念頭になかったのだ。ではなぜ一緒に暮らしていたのか。成り行きだったのか。もちろんそれもあるだろうが、自我が目覚めても、自分がこれからどうしたいのか、思案する時間も余裕もなかったからだと考える。それが彼の心を嵐のように駆け巡り、結果的に困惑するだけでドイツに来る前と何も変わらない状態になってしまったのだと思う。自分のことが分からないのに、相手のことを考える余裕など普通はない。現にロシア行きは名誉回復のためであり、頻繁に届くエリスからの手紙がなければ、彼女のことを忘れたかもしれないのだ。そして、豊太郎は先のことをよく考えず、言われるがまま相沢に彼女と別れることを約束した。家に帰ると、エリスは新たな生命の誕生を心待ちにしているようだった。そんな彼女を見て彼は動揺してしまう。そして約束を果たせないまま時が過ぎてゆく。豊太郎は相沢やエリスに依存し、自由を得ようとしていた。しかし、それが最悪の結果を招いたのだ。いつまでも別れを切り出さない豊太郎に対して、相沢は彼のためを思いエリスに真実を打ち明ける。彼女は狂人のようになってしまった。豊太郎は彼女を精神的に殺した。日本へ帰る船の中、彼は自分に対して、相沢に対して、そして社会に対して「人知らぬ恨み」を抱く。
 人は周りの環境で価値観を構築する。豊太郎は異国の地で自我に目覚め、それまでの自分は機械的な人間であったことに気づく。もし彼に深く考える時間と余裕があったら、違う状況になっていたかもしれない。また、この時代は自己の能力を国家のために役立てるのがエリートの義務であり、個の追求は許されなかった。彼らは知らず知らずのうちに思想統制されていたのだ。
 人はどの時代、どんな環境に生まれるかで違ってくる。しかしそれは仕方のないことだ。その事実を受け止め、その中でどう生きていくかを考えることが重要である。人や社会のせいにしたり、現実逃避しても何も変わらず、負のサイクルに陥るだけである。私はこの作品を通して真実を見つめ、自分の意思をしっかり持ち、決断することの大切さを学んだ。

〈森 鴎外 著『舞姫』のあらすじ〉
 若くして学士となり、某省よりドイツ留学を命じられた前途有望な官吏、太田豊太郎。ベルリンの大学の自由な空気に触れ、新しい自我の目覚めを感じるが、踊り子エリスとの恋愛を事由に免職される。エリスとの楽しい生活をとるか自分の将来をとるかという苦しみの中、帰国を決意する豊太郎

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【 国語科の主な年間行事 】

5月  第1回校内漢字検定試験
6月  能楽鑑賞(高3)
    歌舞伎鑑賞(高1)
9月  第2回校内漢字検定試験
    全国中学生人権作文コンテスト選出
11月 東洋大学主催現代学生百人一首応募
    与謝野晶子短歌文学賞応募
12月 文楽鑑賞(高2)
2月  文部科学省認定 漢字検定試験
    伊藤園お〜いお茶はいく大賞応募
    星美百人一首・国語科便り発行
    校内読書感想文コンクール優秀賞者発表
    
星美百人一首 《 優秀賞 》

中学の部
じぇじぇじぇじぇじぇおもちをを食べたら 
       体重が倍返しなう冷や汗ブシャー    とわ(中2)

高校の部
「つらすぎる」毎日嘆いたこの坂が
       今となっては夢の道筋         香織(高3)      


posted by HM at 09:05| 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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